黒曹以 「知られざる磯魚」クロソイ カサゴ目フサカサゴ科メバル属 Sebastes schlegelii Hilgendorf,1880
■水曜日

その分類


クロソイ

ただ困っていても困ってしまうので、分類学でソイがどう扱われていたか見てみよう。

京都大学の松原喜代松『魚類の形態と検索』(1955年)を見てみる。

太平洋産のメバル系魚類は、メバル属 Sebastodes(現在のメバル属はSebastesである)と、ソイ属 Sebastichthysの2群に分けられていた。もともとの古いメバル属は、風雲急を告げはじめる幕末の1861年にアメリカの魚類学者ギルによって設立され、ソイ属も同じギルによって1862年に設立されている。

2群に分けられてから、さまざまな議論が続いていたようだが、外部形態だけについて松原から抜粋してみよう。

●旧メバル属
◎両眼の間隔は比較的広く、突出するか、平坦か、わずかにへこむ。
◎下顎は上顎より著しく前方に突出する。
◎頭蓋骨の棘や隆起線は発達が悪いか、まったく発達しない。
◎両顎と鰓条骨は一様に鱗を被る。
◎胸鰭下部軟条は細い。
●旧ソイ属
◎両眼の間隔は狭くへこんでいる。
◎両顎は同じ長さか下顎が短い。
◎頭蓋骨の棘や隆起線は強く立っている。
◎両顎と鰓条骨は無鱗。
◎胸鰭下部軟条は著しく肥厚する

いまのメバル属魚類が、それぞれ、どう分けられていたか抜き出してみよう。

●旧メバル属
◎クロメヌケ
◎ヤナギノマイ
◎エゾメバル
◎ヤナギメバル
◎メバル
◎トゴットメバル
◎ウスメバル
◎サンコウメヌケ
◎アコウダイ
◎オオサガ
◎バラメヌケ
◎ウケグチメバル
●旧ソイ属
◎クロソイ
◎キツネメバル
◎ゴマソイ
◎シマゾイ
◎タケノコメバル
◎ムラソイ
◎ヨロイメバル

松原は矛盾点をあげて2群に区別することは妥当ではないとしている。

ソイ属は消え、新しいメバル属になったのだが、ソイの原形の中に、この考え方も残っているように思える。この旧ソイ属に含まれるものが、広い意味でのソイというグループであり、旧メバル属に含まれるものが、広い意味でのメバルと、メヌケというグループであろうと思う。

松原がいうように、なかなか、ひとくくりにはできないのだけれど、両眼の間が狭くへこんでいて、両顎がそろっていて、頭の周りがごつごつしていれば、ソイだなあと感じるのである。

釣り人が「ソイ」なのだと感じる特徴をまとめておこう。

1)体高が低く体の断面は円筒形に近い
2)尾鰭後縁が円形である
3)両眼の間が狭くへこんでいる
4)両顎がそろっている
5)頭の周りがごつごつしている
6)体は黒っぽい

釣り人が「メバル」なのだと感じる特徴をまとめておこう。

1)体高が比較的高く体の断面はどちらかといえば平たい
2)尾鰭後縁が截形(まっすぐ)である
3)両眼の間隔は広く突出するか平坦である
4)下顎が長い
5)頭の周りはつるんとしている
6)体は赤っぽいものが多い

それでは、なんとなくの「釣り人の感じ」をもとに、いま記載されている日本産メバル属33種を、グループ名としての「ソイ■□」「メバル●○」「メヌケ★☆」の三つに強引に分けてしまう。それぞれのグループの中で、黒マークは典型的であり、白マークはやや傾向があるというほどの意味である。

1
アラメヌケ
Sebastes aleutianus
2
アコウダイ
Sebastes matsubarae
3
アラスカメヌケ
Sebastes alutus
4
ウケグチメバル
Sebastes scythropus
5
カタボシアカメバル
Sebastes kiyomatsui
6
ハツメ   
Sebastes owstoni
7
ヒレグロメヌケ
Sebastes borealis
8
バラメヌケ
Sebastes baramenuke
9
サンコウメヌケ
Sebastes flammeus
10
オオサガ 
Sebastes iracundus
11
クロメヌケ
Sebastes glaucus
12
ナガメヌケ
Sebastes variabilis
13
ヤナギメバル
Sebastes itinus
14
ガヤモドキ 
Sebastes wakiyai
15
アカガヤ 
Sebastes minor
16
ヤナギノマイ
Sebastes steindachneri
17
エゾメバル
Sebastes taczanowskii
18
トゴットメバル
Sebastes joyneri
19
ウスメバル 
Sebastes thompsoni
20
メバル 
Sebastes inermis
21
クロソイ
Sebastes schlegeli
22
タケノコメバル
Sebastes oblongus
23
コウライキツネメバル
Sebasles ijimae
24
キツネメバル
Sebastes vulpes
25
タヌキメバル
Sebastes zonatus
26
ゴマソイ 
Sebastes nivosus
27
シマゾイ 
Sebastes trivittatus
28
コウライヨロイメバル
Sebastes longispinis
29
ヨロイメバル
Sebastes hubbsi
30
ムラソイ
Sebastes pachycephalus pachycephalus
31
ホシナシムラソイ
Sebastes pachycephalus nigricans
32
オウゴンムラソイ
Sebastes pachycephalus nudus
33
アカブチムラソイ
Sebastes pachycephalus chalcogrammus


フサカサゴ科を見るとき、尾鰭後縁の形状が、丸いか、まっすぐか、下顎が出ているか出ていないかというようなことが、印象として重要になるのだが、こういうことをキーにして、ひとくくりにすると、かなり例外がでてしまう。そういう意味で、これらの分け方にあまり意味はなく、あくまでも私見だと断っておく。

それならば、なぜ分けたのかと叱られそうだ。

いま、ソイは、ゆるい釣り人の感覚だと思う。この、ゆるい感覚を、はっきりとぼくらのものにしていって、新しい釣り文化という形にしていきたいと思っている。

そういう意味でいえば、ソイなど曖昧なままでよく、マゾイと、こだわる必要もないような気がするのだが、こだわりたがるのが釣り人である。

困った。

マゾイって、なに!?