
スズメダイは雀鯛と書く。
これは雀のように小さな鯛が、雀のように群れるからであろうと思われる。
そういう意味では、きれいな命名であるのだが、どこで、そう呼ばれていたのか、いつごろからか、はっきりしない。
ジョルダン・田中・スナイダーの『日本産魚類目録』(1913年)では、スズメダイである。
『魚鑑』(1831年)を見ると、わかさぎで、「駿河にすずめの魚」という説明がある。江戸時代、駿河でワカサギのことを「すずめの魚」といっていたようであり、スズメダイの記述はない。
和歌山で磯釣りをしていると、スズメダイが集まってきて、黒っぽくてなにもなければ「おせん」と呼び、縞があれば「おやびっちゃ」と呼ぶと書いた。
おせんとは、おせん殺しのことである。
宇井縫蔵の『紀州魚譜』(1929年)でスズメダイの方言を見てみよう。
| ヤハギ | 田辺・湯浅 |
|---|---|
| ヤエダ | 白崎 |
| ナベトリ | 周参見 |
| ナベコサゲ | 和深 |
| オセンコロシ |
和歌浦・湯浅・白崎・塩屋・切目・田辺……… 水族志に曰く「足代浦漁人云おせんといふ女この魚を食し骨硬し咽腫て死す故に名づくこの魚硬ければなり」と。
尚水族志には次の方言がある。 チンタンベラ(熊野)モナブリ(新宮)アタンボ(日置)ヤタハゲ(九木浦) |
スズメダイの方言は、和歌山だけで、これほどあったのである。
ちなみにオヤビッチャを見てみると、
| マツウオ | 和深 |
|---|---|
| セセラ | 和深 |
| シマヤハギ | 田辺 |
この三つが収録されている。和歌山で釣り人が「おやびっちゃ」と呼んでいるのは、標準和名であった。
このオヤビッチャも『日本産魚類目録』(1913年)から、この名である。
意味がよくわからない。
榮川省造の『新釈魚名考』(1982年)を見てみよう。
前略)分類方言辞典・全国方言辞典に「ビッチョ・ビッチャゴ。佐賀・壱岐で。赤ん坊」としてあり、民俗学事典には「ビッチャ。東北・北陸方面の方言で、赤ん坊のこと」となっている。関西方言では類似のものに「ビッタ」というのがある。仮に、オヤビッチャの<オヤ>を「親」と解するならば、この呼び名の語意は、「親魚になっても、赤ん坊のように小さく可愛い魚」ということになるだろう。秋田庄内地方では。ゼニタナゴを<ビッチャ>とよぶ。
『新釈魚名考』榮川省造
これが、近いのかもしれない。
オヤビッチャも、スズメダイと並んでよく釣れる魚である。
すぐに見分けられるから覚えておいて欲しい。
緑がかった乳白色の体色に、くっきりと5本の黒色横帯があり、背に、黄色斑がある。
この黄色斑がなくて、尾鰭の上下葉に黒色帯があれば、よく似ているけれども、より南方系のロクセンスズメダイになる。
とにかくスズメダイ類には、変わった名が多い。
これは、なにか、わかるだろうか?
アブッテカモ。