さぞ料理は面倒と思われるだろうが、実はヒイラギほど手間のかからない魚はない。あのぬらぬらもそのままに、丸干しやから揚げにもする。平べったくて小さくて、ウロコのない魚には願ったりの料理法じゃないか。証拠に酒屋で市販の「小魚入り豆菓子」を探れば、見慣れたヒイラギも見つかるはず。魚に気も止めないで、ビールばかり飲んでいてはいけないだろう。
丸干しには、小型のオキヒイラギを使うことが多い。
- ヒイラギで7aもあったら内臓を出した方がいいが、基本は下ごしらえもなく、塩も振らずにそのまま天日干しにする。
- 大量に干す場合は魚同士がくつかないように、時々バラけさせること。串に刺してから、干すことも一考だ。
- 干物には、冬場の乾燥した風がもっとも適する。暑い直射日光は嫌っても、ゆるやかな日差しならヒイラギを芯まで干し上げてくれるだろう。小魚の丸干しで、生干しは禁物。からりと干したら、長期間の保存などせずに早めに焼いて食べること
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アドバイス
オキヒイラギが堤防で釣れることは希だが、漁港では死んで海に浮いていることが多い。イワシなどの巻き網に入ったものを、漁師が捨てたのだろう。ヒイラギは死ぬと浮くので簡単にすくい取られ、じゃま者だから海へポイなのだ。欲しいと言っても面倒で断られるだろうから、こんなオキヒイラギは拾ってくるに限る。
丸干しを揚げてもいいが、肉を食べる感触は「生」が勝る。
- から揚げとは「空揚げ」で素揚げのことだったが、近年は鳥の唐揚げのように片栗粉の衣を付けた「唐揚げ」と混同してしまう。ヒイラギの「から揚げ」とは、衣を付けない素揚げのことである。
- 新聞紙などに広げて、水気を絞るくらいの努力はして欲しい。水が滴ると油がはねるし、揚げ油の持力も弱まるからだ。塩を振ってしばらく置くことも、脱水と旨味を高めるには効果あり。
- 小魚だから180℃の高温で、1回揚げにする。2度も揚げすると骨は柔らかくなるが、魚の旨味が飛んでしまう。揚げたら、その場でいただくこと。
- つけダレに大根下ろしは飯によし、塩胡椒ならば酒によし。厄介なぬらぬらねばねばも、熱が通れば跡形もない。
アドバイス
番外だが「唐揚げ」料理の「南蛮漬け」も、実はヒイラギなどの小魚には捨てがたい。あらかじめ三杯酢を用意して揚げたての熱々を放り込み、レモンやピーマン、タマネギのスライスなどと一緒に漬け込む。骨張った小魚こそ余分な油を吸わず、骨せんべいを食べているようでも、濃厚な味は飯にも合う。
酒のさかな...
薄い葉っぱのような姿から漢字名では、魚にして唯一木偏で「柊(ひいらぎ)」と書かれる。ぬらぬらとしていながら棘が痛いこともその理由だが、おびただしく群れる小魚の様に木の葉を連想しても不思議ではない。四国高知では「にろぎ」と称してヒイラギを「内にろぎ」、オキヒイラギを「沖にろぎ」と呼ぶようだ。伊豆では「榎の葉」でエノハ、千葉では金属的な輝きのせいだろうかギラと呼び、静岡でネコナカセ、富山でイタイタなど特徴をとらえた地方名が多い。
日中の堤防釣りは真剣勝負じゃないが、長閑でいい。投げ釣りでも、ふかせ釣りでもヒイラギは食いついて、小魚とは思えない強い引きを一瞬見せる。その後はあっけないのだが、掛かった針を外そうとすれば口元が異様に突き出ることも特徴で、持参のタオルをダメにする強い粘りにも参ってしまう。見渡せばどこもキラキラと、ヒイラギばかりが釣れている。
休日のファミリーフイッシングは子供にせがまれたのか、お父さんが誘ったか。水が入った小さなバケツに、ヒイラギだけが浮いていることも多い。すでに気落ちしているのに、帰り際に捨ててしまっては子供心にはもっとつまらない。何度も言うが、こんな一日こそお父さんはヒイラギを釣って大喜びしなくてはいけない。子供と勝負するくらいヒイラギ釣りに熱中すると、小メジナこそ外道に見えてくる。
家に帰ったら、ヒイラギはから揚げと余分に釣れたら干物にもしよう。親子で熱中した釣果を、親子で味わえるってそう何度もあることではない。ヒイラギという、身近な魚があってのこそなのだから大切にしよう。どんな魚もバカにしないで美味しさを教えることは、釣りをする先輩としても、お父さんとしても大切な役割である。
オキヒイラギの現状もまだ惨憺たるもので、定置網では海面の落ちた木の葉同様に玉網ですくって捨てられる。漁網が絞られてほかの魚が暴れ出すと、オキヒイラギはストレスに弱いのか、全員が腹を横にしていち早く浮いてしまう。関東地方ではとくに人気がなかった魚だが、近年は伊豆や千葉あたりの観光地で干物にして売られるようになった。丸干しとはいえ小魚だけにそれなりの手間はかかるが、捨てられることも多い魚なので買われていく風景は傍目にも嬉しい。ヒイラギをバカにしていた時代は、遠くなろうとしている。